ミックとチャーリー。ジミー・ミラーにまつわる話

ストーンズのどの時期が好きかと問われれば、人それぞれだとは思いますが、ストーンズの黄金期が60年代後半から70年代前半であることに異論のある人はほとんどいないのではないでしょうか?

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この黄金期のマスターピースである「Beggars Banquet」「Let It Bleed」「Sticky Fingers」「Exile On Main St.」「Goat Head Soup」をプロデュースしたのがジミー・ミラーです。

そのジミー・ミラーとミック・ジャガー、チャーリー・ワッツのエピソードをご紹介したいと思います。

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「You Can’t Always Get What You Want」を叩いているのは、チャーリー・ワッツ ではなく ジミー・ミラー

ドラマーでもあるジミー・ミラーはメンバーの気に入るグルーヴを出すことができた。素敵で謙虚なチャーリーは「最高なサウンドだ!」と、この曲でのドラムの座をジミーに譲った。

ジミーはスタジオレコーディングでのドラムの演奏法について立ち止まって考えてみるようにチャーリーに勧めた。

その後、レコーディングにおいてより良いドラマーになったチャーリーは、今まで録音した最高のトラックのいくつかをジミーと制作できたことに感謝している。

Rolling Stone誌より引用

昔、批評家の誰かが「下手くそだと思ったらジミー・ミラーだった。なぜチャーリーが叩かなかったのか」なんて言ってましたが、このドッタンバッタンと手数が多く、つんのめったようなドラムがファンキーで良いのになんて思ってました。

The Rolling Stones | You Can't Always Get What You Want(Brussels Affair, Live in 1973) | GHS2020
↑↑↑「You Can’t Always Get What You Want」1973年ライブバージョン↑↑↑

一方、ライブではもちろんチャーリーが叩いているこの曲ですが、スタジオverと印象がまるで違います。長年プレイされてますが、もっとゆったりとして粘っこいリズムアレンジになってることが多いです。比較して聞いてみると楽しいですよね。

ジミー・ミラーは「Happy」「Shine a Light」「Tumbling Diceのアウトロ」でドラムを演奏し、「Honky Tonk Women」のテンポを決めた印象的なカウベルをはじめ「Gimme Shelter」「Monkey Man」「Can’t You Hear Me Knocking」等の曲で様々なパーカッションを演奏した。

Rolling Stone誌より引用
The Rolling Stones – Honky Tonk Women (Official Lyric Video)
↑↑↑イントロのカウベルはジミー・ミラー↑↑↑
The Rolling Stones – Tumbling Dice [Official Lyric Video]
↑↑↑3:03秒あたりからジミー・ミラーのドラム↑↑↑
The Rolling Stones – Tumbling Dice | Montreux (1972)
モントレーでジャムセッション「Tumbling Dice」

こちらの映像は「メインストリートのならず者」をリリースし、いよいよ北米ツアー開始となる前にスイスのモントレーで行われたのジャムセッションでの「Tumbling Dice」です。

これは完全に私の妄想ですが、演奏終了直前のチャーリーのフィルインが自信なさげに見えます。

おまけにその後、ミックもドラムを叩くマネをして「なんか違うんだよね〜」みたいな表情をしているような・・・

このあたり、この曲のアウトロのドラムがジミー・ミラーになった経緯が覗い知れるような気がします。完全に妄想ですけどね。

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ミック・ジャガーには、ジミー・ミラーに自分のボーカルを小さくミックスしてもらいたいという明確な理由があった

ミックとジミーはいつも彼のボーカルをめぐって少し争っていた。

ジミーはストーンズメンバーの演奏が一番全面に出るべきだと思っていたが、ミキシングの際にいつも、ミックは「ボーカルを全面に出しすぎ」と言っていた。

「ミック!なぜいつもボーカルの音量を下げろと言うんだい?…. それって、自分の歌声に自信がないってこと?」ジミーは言った。「いいや、違う。そうじゃない。」と言うと、ミックは次のように理由を説明した。

ミックが成長して黒人ブルースを聴いていた時、アーティストの歌声はしばしば一塊のドロドロのように不明瞭に聞こえたので、歌詞を覚えるのはちょっとしたコンテストのようだった。

ラジオで時たま聞いただけでは曲の歌詞を理解することはできないので、外に出てレコードを買って、何度も繰り返し再生する必要があった。

いつでも実利を重んじるミックは、自身のボーカルをあえて聴こえにくくすることで、歌詞を知りたがる人々がレコードを購入する傾向が高まると信じていた。

Rolling Stone誌より引用

先ほどの「Tumbling Dice」もそうですが、「Brown Sugar」「All Down The Line」などの曲、特にコーラスを聞くと顕著ですが、リードヴォーカルがわからないくらいグチャグチャして一塊のように聴こえると思います。

All Down The Line
↑↑↑例えば1:05秒あたりからのグチャグチャ感↑↑↑

そのため渾然一体となったエネルギーが炸裂するようなカッコよさがあります。

これも昔、何かの本で読んだ記憶があるのですが、ロックの歌詞はあえて不明瞭に発音すべし!とあった気がして、それも初期のブルースやロックンロールの影響受けて、そのほうがカッコいいという事だった気がします。

しかし実際は、歌詞が知りたくなる気持ちを利用した販促手段だったとは驚きです。

さすが奨学金を貰ってLondon School of Economics(東大より世界大学ランキング上)に通うエリートだったミック・ジャガーですね。目の付け所が違うわけです。

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